性交時の痛みは、驚くほど多くの人が経験しています。そして驚くほど語られません。
理由は察しがつきます。相手に言えば拒絶と受け取られそうで、医師に言うのは恥ずかしく、友人には話題にしにくい。だから多くの人が、痛みを前提として受け入れてしまう。
はっきり書きます。痛みは、性交に必然的なものではありません。 それは何かが起きているという知らせです。
技法の話に入る前に、必ず確認すべきことがあります。次のいずれかに当てはまるなら、婦人科です。
これらの背後には、外陰部の炎症、感染症、子宮内膜症、皮膚の疾患、会陰の傷の治り方、ホルモンの変化など、治療できる原因があります。
特に更年期以降の乾燥と痛みは、粘膜が薄くなることによって起きる、はっきりした身体の変化です。医師に相談できる選択肢が複数あります。 「年だから仕方ない」ではありません。
「潤滑剤を使えば解決する」という助言は、半分は正しく、半分は危険です。潤滑剤は摩擦を減らしますが、痛みの原因を隠してしまうこともあります。原因を確かめてから使ってください。
検査を受けて「異常なし」と言われることがあります。それでも痛い。
このとき起きていることは、多くの場合、筋肉の防御反応です。
骨盤の底には、意識では動かしにくい筋肉があります。恐怖や緊張、あるいは過去の痛みの記憶があると、この筋肉が近づかれた瞬間に閉じる。本人の意志とは無関係に起こります。
そして、ここに悪循環があります。
痛い → 次も痛いだろうと身構える → 筋肉が閉じる → もっと痛い
この輪の中にいるとき、技法を変えても効きません。 「もっとゆっくり」「もっと優しく」では抜けられない。輪そのものを止める必要があります。
この場面で最もよく言われ、最も役に立たない言葉が「リラックスして」です。
リラックスは、命令で達成できる状態ではありません。むしろ「リラックスしなければ」と思うことが、新しい緊張を作ります。
そして、もっと根本的な問題があります。身体が閉じているのは、閉じるだけの理由があるからです。
痛みの記憶、望まない経験、断れなかったこと、いま安全だと感じられていないこと。筋肉は、それらに正しく反応しています。 壊れているのではありません。
だから、順番はこうなります。
緩めようとする前に、緩んでよい状況を作る。
一、医療で原因を確かめる。 ここを飛ばさない。
二、「しなければならない」を降ろす。 期間を決めて挿入を伴う行為をやめる、という選択は有効です。逃げではなく、輪を断つ手当てです。
三、痛くない範囲を確かめ直す。 どこまでなら平気か。触れられて心地よい場所はどこか。痛みのない領域を広げるほうが、痛い場所を克服するより先です。
四、断れる関係を作る。 相手がいる場合、「今日はやめる」と言えるかどうかが、身体の反応を大きく変えます。言えない関係のままでは、身体は開きません。
三番目の手順は、呼吸とからだ の「感覚の地図をつくる」がそのまま使えます。性的でない状態から始める方法です。
痛みが、望まない性的な経験と結びついている場合があります。
そのときは、この記事に書いたどれよりも先に読んでほしいものがあります。からだが憶えていること です。
そこには、してはいけないことと、相談できる窓口を書いてあります。
ひとりで抱えないでください。
技法の本は、痛みを「まだ準備が足りない」問題として扱いがちです。前戯を長く、潤滑剤を、体位を変えて、と。
それで解決することも、確かにあります。けれど解決しないとき、それは技法の不足ではありません。
身体は、理由があって閉じています。その理由を扱わずに開けようとすることが、いちばん遠回りになります。